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空き家の売却で損をする人は、たいてい値段で損をしていません。期限で損をしています。
「安く売ってしまった」という後悔より多いのが、「あと半年早ければ税金が数百万円違った」「勧告を受けてから売ることになった」という後悔です。相続した空き家には、親が亡くなった日を起点にいくつもの期限が走っています。ところが片付けや兄弟の話し合いをしているうちに、その期限のほうが先に来ます。
この記事では、実際の相談で多い、相続した家の売却で「損をした人」の型を5つ挙げ、それぞれどの期限を越えたせいで損になったのかを整理します。自分がどの型に近いか、先に見てください。
相続した空き家の売却に走っている5つの期限
先に一覧にします。すべて、親が亡くなった日(相続開始日)が起点です。
| 期限 | いつまで | 越えると |
|---|---|---|
| 相続空き家の3,000万円特別控除 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(かつ2027年12月31日まで) | 譲渡所得から3,000万円を引けなくなる |
| 取得費加算の特例 | 相続税の申告期限から3年(相続開始から3年10か月) | 払った相続税を取得費に足せなくなる |
| 相続登記 | 相続を知った日から3年 | 10万円以下の過料の対象 |
| 相続放棄 | 相続を知った日から3か月 | 放棄できなくなる |
| 管理不全空家の勧告 | 期限ではなく状態。指導を放置すると勧告 | 翌年度から固定資産税が最大6倍 |
このうち金額が一番大きいのが、1行目の3,000万円特別控除です。損をした人の型も、ここに集中します。
型1|片付けに1年かけて、3年目の年末を越えた
相続した家の中に、親の荷物が残っている。遺品整理は少しずつ自分でやろう。仏壇もあるし、兄弟の予定も合わない。気がつくと2年が過ぎている。
ここで慌てて家を売りに出しても、買い手が決まって引き渡すまでに半年はかかります。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日が、相続空き家の特例の期限です。たとえば2023年8月に相続が始まったなら、期限は2026年12月31日です。片付けに時間を使った分だけ、売却にかけられる時間が削られます。
控除が使えるかどうかで、譲渡所得税は数百万円単位で変わります。取得費が分からない古い家ほど、売却代金の95%が利益として扱われるので、控除の有無が直接効きます。
荷物は、売却を止める理由になりません。相続した家の片付けは査定前に必要?で書いたとおり、荷物が残ったままでも査定は取れますし、買取なら残置物ごと引き取る会社もあります。
型2|「昭和56年より前の家」なのに、耐震か解体の条件を知らなかった
相続空き家の特例には、家屋の条件があります。昭和56年5月31日以前に建築された家が対象で、しかも売却するときに耐震基準を満たしているか、取り壊しているかが要ります。
2024年からは緩和され、売却したあと翌年2月15日までに買主が耐震改修か取り壊しをすれば適用できるようになりました。ただしこれは契約にそう書いておく必要があります。何も決めずに古家付きで売り、買主がそのまま住み始めたら、特例は使えません。
「うちは古いから対象だろう」と思っていて、条件の後半を知らなかった。これで控除を落とす人がいます。売却の条件を決める前に、不動産会社に「相続空き家の特例を使いたい」と最初に伝えてください。
型3|兄弟3人で相続して、控除が2,000万円に減っていた
2024年1月1日以後の売却から、相続人が3人以上いる場合、この特例の控除額は1人あたり2,000万円になりました。それまでは3,000万円でした。
「3,000万円引けるから税金はかからない」と計算していた人が、申告のときに1,000万円分ずれる、ということが起きています。兄弟が多い家ほど、事前の見積もりが甘くなります。
兄弟で相続した家の分け方は実家を兄弟で相続したら――共有名義のまま売るのが危ない理由にまとめています。
型4|相場より高く出して1年売れず、結局は買取に
これは値段の失敗に見えて、やはり期限の失敗です。
思い入れのある家なので、査定より高い値段で売りに出す。問い合わせが来ない。半年後に値下げ、それでも動かない。1年が過ぎたところで不動産会社から「買取なら〇〇万円で」と提案される。
買取価格は仲介での売却より低くなるのが通常です。ここで損をしたと感じる人が多いですが、本当の損は、その1年の間に固定資産税と管理の費用を払い続け、3,000万円控除の期限も近づいたことです。
最初から相場で出していれば、半年で売れていた家は多いです。相場は1社の査定では分かりません。3社ほどに出して、その幅を「相場」として受け入れるところから始めてください。
型5|草を放置して指導を受け、勧告の直前になって売りに出した
遠方に住んでいて、年に1回しか行けない。庭の草が伸び、隣家から市役所に連絡が入る。市から「管理不全空家」として指導の通知が届く。
指導の段階で草を刈れば止まります。ただ、指導を受けた家は、周辺にそのことが知られています。その状態で家を売りに出すと、買主は「行政に目をつけられた家」として値段を見ます。
勧告まで進むと、翌年度から固定資産税の住宅用地特例が外れ、最大6倍になります。管理不全空家とは?に仕組みを書きました。売却するなら、指導が来る前です。
期限を越える前にやることは、ひとつ
5つの型に共通するのは、「売ると決めるのが遅かった」ではありません。「いくらで売れるかを知るのが遅かった」です。
金額が分かっていれば、片付けに1年かける価値があるか、兄弟にいくら渡せるか、値下げしてでも今売るべきか、すべて計算できます。金額が分からないまま、感情と予定で時間が過ぎていきます。
査定は売却すると決めていなくても取れます。相続人の1人が動けば、兄弟の同意も要りません。
古い家や長く空いていた家は、仲介で買い手がつきにくいことがあります。空き家を専門に買い取る会社なら、残置物があっても、指導を受けた後でも、値を付けることがあります。
税額の計算そのものは実家を売ったら税金はいくら?3,000万円特別控除をわかりやすく整理に、売却の手順は相続した家を売る流れを7ステップで整理にまとめています。
※2026年9月時点の制度にもとづく一般的な整理です。特例の適用可否は家屋・譲渡の条件によって変わります。具体的な判断は税理士・税務署にご確認ください。出典:国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、No.3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、国土交通省 改正空家法関連資料

