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実家を兄弟で相続することになったとき、いちばん手軽に見えるのが「とりあえず共有名義にする」です。
その場は平等で、話もまとまりやすい。ところがこれが、後からもっとも揉める選択になりがちです。
共有名義とは
1つの不動産を複数人で持ち合う形です。兄弟2人なら2分の1ずつ、といった持分になります。手続き上は簡単で、その場の話し合いも「平等だから」とまとまりやすい方法です。
共有のまま持ち続けると起きること
- 売るのに全員の同意が必要:1人でも反対すれば売れません
- 意見が食い違いやすい:「早く現金化したい」「思い出の家だから残したい」は、どちらも正しい主張です
- 次の相続で人数が増える:兄弟の誰かが亡くなると、その配偶者や子へ持分が移り、関係者が雪だるま式に増えます
- 管理費用の負担でもめる:固定資産税・修繕費を誰がいくら払うのか
共有は「決断の先送り」であり、問題は消えるのではなく、人数が増えた状態で後から戻ってくると考えたほうが現実的です。
しかも2024年4月から相続登記は義務化され、施行日より前に発生した相続も2027年3月31日までに登記が必要になりました。「決まるまで置いておく」が通らなくなっています。詳しくは相続登記をしないまま家は売れる?にまとめました。
ではどう分けるか(3つの方法)
1. 換価分割(売って現金で分ける)
家を売却し、代金を持分に応じて分ける方法です。誰も住まないなら最もすっきりする選択肢です。
2. 代償分割(1人が取得し、他へ現金を渡す)
誰かが住み続ける場合の方法。取得する人に現金の準備が必要です。この場合も家の価格が分からないと「いくら渡せば公平か」が決まりません。
3. 現物分割
土地を分筆して分ける方法。広い土地でないと現実的ではありません。
どの方法でも、出発点は同じです
換価分割なら売却額を、代償分割なら代償金の計算根拠を——いずれも「この家はいくらか」という数字が必要です。
そしてここが大事なのですが、身内の誰かが言った金額では、他の相続人はまず納得しません。第三者である不動産会社の査定額のほうが、全員が受け入れやすい材料になります。
・「高く見積もりすぎ」「安く言っている」という疑いが消える
・代償金の計算根拠がはっきりする
・売る/住む/貸すの比較が、具体的な数字でできる
査定は無料で受けられます。売ると決めていなくても構いません。
複数社にまとめて依頼する一括査定は便利ですが、注意点もあります。一括査定のデメリットも正直にで整理しました。
共有名義を解消する方法
すでに共有になってしまっている場合でも、解消する手段はあります。
- 持分を他の共有者に売る・買い取る:話し合いがつくなら、これが最もシンプルです
- 全員で売却する:換価分割と同じ結果になります
- 持分だけを第三者に売る:法律上、自分の持分は他の共有者の同意なく処分できます。ただし買い手は共有持分の買取を専門とする業者などに限られ、価格は市場価格を大きく下回るのが一般的です。無断で行えば、他の兄弟との関係は決定的に悪化します
- 共有物分割請求(民法258条):話し合いがまとまらないとき、裁判所に分割を求める手続きです。裁判所は現物分割・賠償分割(1人が取得して他へ金銭を支払う)・競売による分割のいずれかを判断します
ただし、金額を知ること自体は話し合いの材料になります。共有持分を専門に扱う買取会社なら、他社で断られた持分でも査定に応じることがあります。共有持分スピード買取窓口などで目安を把握したうえで、「その金額で第三者に渡るくらいなら」と兄弟間の買い取りがまとまることもあります。売ると決める前の情報収集として使う方法です。
時間も費用もかかり、競売になれば市場価格より安くなるのが通常です。全員にとって取り分が減る結果になりかねません。ここに至る前に決着させるほうが、金銭的にも関係の面でも得策です。
「共有のまま貸す」は解決になりません
「売るのは忍びないから、とりあえず貸そう」という案もよく出ます。ただ、共有のままの賃貸には制約があります。
共有物を賃貸に出すのは管理行為にあたり、持分の価格の過半数で決めることができます。全員の同意までは要りません。
ただし過半数で決められるのは期間が限られた賃貸だけです。建物なら3年以内、土地なら5年以内が目安で、これを超える契約は「変更行為」として共有者全員の同意が必要になります。
さらに実務では、家賃の分配、修繕費の負担、入居者トラブルの対応をめぐって揉めやすく、共有のままの賃貸経営はおすすめしにくいのが正直なところです。
話し合いをこじらせないための順序
- 先に情報を揃える:査定額、ローン残債、固定資産税額。数字がないまま「売る/売らない」を議論すると感情論になります
- それぞれの事情を先に聞く:「現金が必要」「思い出を残したい」「管理を任されるのが負担」。理由が分かると落としどころが見えます
- 期限を決める:いつまでに結論を出すか。決めないと数年経過し、次の相続が重なります
実際に多いパターン
「1人が住み続けたい、他は現金がほしい」——代償分割で解決できます。住む人が他の相続人へ代償金を払いますが、そのためには家の評価額が必要です。ここで身内が主張する金額ではなく、第三者の査定額を基準にすると納得を得やすくなります。
「誰も住まないが、売るのは忍びない」——気持ちは理解できますが、空き家の維持費と傷みは待ってくれません。管理コストの実額(固定資産税+保険+管理の手間)を計算して共有すると、判断が現実的になります。
売却の段取り全体は相続した家を売る流れを7ステップで整理、税金は実家を売ったら税金はいくら?にまとめています。
よくある質問
Q. 共有名義のまま賃貸に出せますか?
A. 出せます。賃貸は管理行為なので持分の過半数で決められます。ただし建物3年・土地5年を超える契約は全員の同意が必要です。収益の分配や管理の負担で揉めやすい点にも注意してください。
Q. 兄弟の1人が査定に反対しています
A. 査定は売却ではありません。「価格を知るだけ」と説明し、判断材料を揃える段階だと伝えてみてください。数字が出てから話が動くケースは多いです。
Q. 相続登記をしないまま共有で放置していますが、問題ありますか?
A. 2024年4月から相続登記は義務です。施行前に発生した相続も対象で、2027年3月31日が期限になります。放置すると10万円以下の過料の対象になり得ます。
Q. 持分を勝手に売られてしまうことはありますか?
A. 法律上、各共有者は自分の持分を単独で処分できます。だからこそ、関係が悪化する前に方針を決めておくことが大切です。
兄弟間だからこそ、第三者を入れる
共有をめぐる話は、金額の問題であると同時に、これまでの関係の問題でもあります。「誰が親の面倒を見たか」「誰が家を出たか」——そういう話が必ず出てきます。
当事者だけで話すと、どうしてもそこに戻ってしまいます。査定額という客観的な数字と、法律上どうなるかを整理してくれる第三者。この2つがあると、議論が過去ではなく先の話になります。
初回相談を無料で受けられるところもあります。話し合いが止まっているなら、一度整理してもらうのも手です。
※共有物の取り扱いや分割手続きは個別事情によって異なります。具体的な判断は弁護士・司法書士・税理士にご確認ください。
話し合いが進まないときの相談先は、相続の相談先の選び方をご覧ください。
誰が相続するかで税額が変わる点は小規模宅地等の特例で実家の評価額が8割減る条件に整理しました。

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