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親が亡くなり、実家は売却して兄弟で分ける。
そこまでは決まったのに、分け方で話が止まる家があります。
親の介護をしてきた姉は、その分を考えてほしいと思っている。
遠くに住んでいた弟は、半分ずつが当然だと思っている。
どちらの気持ちにも理由があります。
法律には、介護などで親の財産を守った相続人の取り分を増やす「寄与分」という仕組みがあります。
寄与分があるときは、実家の売却代金を半分ずつではなく、寄与分を足した割合で分けられます。ただし、その割合は実家を売る前に、相続人全員で決めて書面にしておくことが大切です。
この記事では、寄与分がある場合の実家の売却代金の分け方を、計算の例と、売却の前に決めておく順番で整理します。
寄与分とは、親の財産を守った相続人の上乗せ分
寄与分は、民法で決められている仕組みです。
親の仕事を無償で手伝った、親にお金を出した、親の介護をした。
こうしたことで親の財産が減らずに済んだ、あるいは増えた相続人は、その分を自分の取り分に上乗せできます。
介護でいえば、本来なら介護サービスや施設に払うはずだったお金を、家族の介護で払わずに済んだ、という形です。
親の財産が減らずに残ったので、その分を介護した人に戻す、という考え方です。
ただし、どんな介護でも寄与分になるわけではありません。
条文では「特別の寄与」が必要とされています。
親子なら当然するくらいの手助けは、寄与分になりにくいとされています。
家庭裁判所が決める場合は、介護の時期、方法、程度、親の財産の額などを考えて金額を決めます。
相続人でない人の介護は「特別寄与料」
相続人でなければ、寄与分は受け取れません。
たとえば長男の妻が義理の親を介護していた場合、長男の妻は相続人ではないので、寄与分はありません。
その代わりに、相続人へ「特別寄与料」というお金を請求できる仕組みがあります。
特別寄与料は、相続が始まったことと相続人を知ってから6か月、または相続から1年を過ぎると、家庭裁判所に求めることができなくなります。
実家が売れるのを待っていると間に合わないことがあるので、早めに相続人へ伝えておきます。
寄与分がある実家の売却代金は、どう分けるか
計算は、寄与分を使って次の順番で進めます。
- 親の財産の合計から、寄与分を引く
- 残りを、法律で決まった割合(法定相続分)で分ける
- 介護をした相続人の分に、寄与分を足す
計算のもとになるのは、実家だけでなく、預金なども含めた親の財産全体です。
実家の売却代金だけを先に分けると、寄与分の計算が合わなくなることがあります。
計算の例:実家の売却代金2,400万円、預金600万円、寄与分300万円
母が亡くなり、相続人は姉と弟の2人。
姉が母の介護を長く続けてきたので、寄与分を300万円とすることで2人が合意した、という例です。
実家は売却して、売るための費用を引いた手取りが2,400万円。預金が600万円あります。
| 寄与分がない場合 | 寄与分300万円の場合 | |
|---|---|---|
| 親の財産の合計 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 寄与分を引いた額 | — | 2,700万円 |
| 姉の取り分 | 1,500万円 | 1,350万円+300万円=1,650万円 |
| 弟の取り分 | 1,500万円 | 1,350万円 |
| 割合 | 姉50%・弟50% | 姉55%・弟45% |
寄与分を足した1,650万円と、弟の1,350万円を、実家の売却代金と預金からどう渡すかは、2人で決められます。
| 渡し方 | 姉 | 弟 |
|---|---|---|
| 売却代金も預金も、55%と45%で分ける | 売却代金1,320万円+預金330万円 | 売却代金1,080万円+預金270万円 |
| 預金は弟が受け取り、残りを売却代金で調整する | 売却代金1,650万円 | 預金600万円+売却代金750万円 |
どちらの渡し方でも、寄与分を含めた2人の取り分は同じです。
ただ、実家の売却代金を何%ずつ分けるかは変わります。
だから、実家を売却する前に、寄与分の額だけでなく、売却代金を何%ずつ分けるかまで決めておきます。
実家の値段は、売る前なら査定額、売ってからなら売却代金の手取りで考えると分かりやすくなります。
手取りは、売却代金から仲介手数料などの費用を引いた額です。
どこまでを引いてから分けるかも、話し合いで決めておきます。
実家の売却にかかる費用は相続した家の売却にかかる費用一覧にまとめています。
寄与分の額は、まず相続人の話し合いで決める
じつは、寄与分の額に決まった計算式はありません。
最初は、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。
話し合いで決まらなければ、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。
話し合いの目安として、介護した日数に、介護サービスを頼んだ場合の1日あたりの費用をかけ、家族の介護なので一定の割合を引く、という考え方がよく使われます。
あくまで目安で、この計算どおりに決まるわけではありません。
話し合いで寄与分を認めてもらうには、介護をしていたことが分かる資料があると進めやすくなります。
- 介護保険の要介護認定の通知
- ケアマネジャーの記録や、介護サービスの利用票
- 介護のために払ったお金の領収書
- 介護の日々を書いた日記やメモ
- 介護のために仕事を減らしたことが分かる書類
実家の片付けで、こうした書類を捨ててしまう人がいます。
寄与分の話し合いが終わるまでは、親の書類と一緒に残しておいてください。
片付けの進め方は相続した家の片付けは査定前に必要?に書きました。
一方で、寄与分を認める側の兄弟にも言い分があることがあります。
たとえば介護をした姉が、親の家に家賃なしで住んでいた、親から生活費を受け取っていた、という場合です。
こうした事情も合わせて話し合うと、寄与分の額が決まりやすくなります。
実家の値段を出してから、寄与分の話をする
寄与分の話を始める前に、実家の値段を出しておきます。
実家がいくらで売れるかが分からなければ、1人いくらになるかは見えないからです。
寄与分の額を、親の財産全体の何%にするかを考えるときにも、実家の値段が要ります。
実家の査定は、相続人の1人でも頼めます。
実家の名義が亡くなった親のままでも、査定を頼むことはできます。
電話を受けずに目安だけ知りたいなら、ざっくりAI査定+で実家の住所などを入れると、相場の目安が分かります。
不動産会社に査定を頼むときは、次のことを伝えておくと、話し合いに使える数字が出やすくなります。
- 相続した実家で、兄弟で売却して分けることを考えていること
- 寄与分を含めた分け方を決めるために、売却できる値段の幅を知りたいこと
- 名義が親のままか、相続登記が済んでいるか
兄弟それぞれが別の会社の査定額を持ち寄ると、高い方と低い方で言い合いになりがちです。
同じ条件で何社かに頼み、幅で話すと、話がまとまりやすくなります。
寄与分の話がまとまらないときは
お金と介護が絡む寄与分は、気持ちのぶつかりやすい話です。
介護をした側は「これだけやったのに」と思い、しなかった側は「親子なら当然」と思う。
兄弟だけで話していると、お金の話より先に、昔の話でもめてしまうこともあります。
話し合いが進まないときは、第三者を入れるのが近道です。
弁護士に相談すると、介護の内容から寄与分が認められそうか、どのくらいの額が見込めるかの見通しを聞けます。
家庭裁判所の調停では、調停委員を間に入れて話し合えます。
寄与分の額で兄弟の話がまとまらない人へ
寄与分が認められそうか、どのくらいの額になりそうかを、まず専門家に聞いてみると、話し合いの落としどころが見えてきます。初回の相談を無料で受けられるところもあります。
実家を売却する前に、遺産分割協議書に書くこと
相続人全員が合意すれば、実家の売却代金を遺産分割の中で分けられます。
合意した内容は、遺産分割協議書に書いておきます。
書いておくのは、次のことです。
- 寄与分を認める相続人と、その額
- 実家を売却して、代金を分けること(換価分割)
- 売却代金から引く費用の範囲
- 売却代金を誰が何%受け取るか
- 売却の手続きを誰が代表して進めるか
- 実家が売れなかったとき、値段を下げるときの決め方
相続人の1人が代表して実家を売却し、代金を受け取ってからほかの兄弟に渡す形もあります。
この場合、協議書に「売却代金を分けるために代表して売る」ことを書いていないと、兄弟にお金を渡したことが贈与と見られるおそれがあります。
協議書の作り方は、遺産分割協議書の書き方にまとめています。
実家を売却するには、先に相続登記をして、名義を親から相続人に変える必要があります。
相続登記は、相続で実家を取得したと知ってから3年以内にすることが義務になっています。
詳しくは相続登記をしないまま家は売れる?に書きました。
売却したときの税金は、受け取る割合で考える
実家を売却して利益が出ると、税金がかかることがあります。
受け取る割合が寄与分で変わると、それぞれが申告する額も変わります。
登記の持分や協議書の書き方で扱いが変わることがあるので、売る前に税理士に確かめてください。
親が1人で住んでいた実家を売るときは、相続人ごとに最高3,000万円(実家を相続した人が3人以上なら2,000万円)まで利益から差し引ける特例を使えることがあります。
この特例を使うには、実家を売却する期限があります。
期限のことは相続した家の売却は3年以内にに、売却の税金の計算は相続した家を売却したときの税金に書きました。
寄与分と実家の売却に関わる期限
急がなくてもよいように見える寄与分の話し合いにも、期限はあります。
実家の売却にも、それぞれ期限があります。
| 期限 | 何の期限か | 過ぎると |
|---|---|---|
| 相続と相続人を知ってから6か月、または相続から1年 | 相続人でない親族の特別寄与料 | 家庭裁判所に求められなくなる |
| 相続を知った翌日から10か月 | 相続税の申告(かかる場合) | 加算税などがかかることがある |
| 取得を知ってから3年 | 相続登記 | 過料の対象になることがある |
| 相続から3年がたつ日の、その年の12月31日まで | 空き家の3,000万円特例を使って売却する期限 | 特例が使えなくなる |
| 相続から10年 | 寄与分を主張できる期限 | 原則として、法定相続分で分けることになる |
相続から10年を過ぎて遺産分割をすると、原則として寄与分を主張できなくなります。
10年の前に家庭裁判所へ遺産分割を求めていた場合などは別です。
実家を空き家のまま置いて話し合いを先送りしていると、この期限が近づいてきます。
寄与分がある実家の売却で、やってはいけないこと
- 分け方を決める前に、実家を売却する:売却代金を「とりあえず半分ずつ」と渡すと、あとから寄与分の分を取り戻しにくくなります
- 代表者が協議書なしで代金を受け取る:兄弟へ渡したお金が贈与と見られるおそれがあります
- 介護の記録を片付けで捨てる:寄与分の話し合いで、介護をしていたことを示せなくなります
- 寄与分を口約束で決める:売却代金が入ったあとで「そんな約束はしていない」となりがちです
- 話し合いを10年先送りする:寄与分を主張できなくなります
兄弟の1人が実家の売却に応じないときは
寄与分の額で折り合わず、兄弟の1人が実家の売却そのものに反対することもあります。
実家を相続人全員の名義で売るには、全員の同意が要ります。
話し合いがまとまらなければ、調停や審判で分け方を決めることになり、審判で実家の売却が決まれば、競売になることもあります。
実家の自分の持分だけを、先にお金に換える方法もあります。
共有になった実家の持分は、買い取る専門の会社があります。
値段は、実家全体を売却したときの持分より低くなるのが普通ですが、話し合いを続けずに区切りをつけられます。
兄弟の話し合いが長引き、自分の取り分だけでも先に決めたい人へ
自分の持分がいくらで買い取られるかを知っておくと、兄弟で実家ごと売却したほうがいいのか、持分だけ手放すのかを比べられます。共有持分スピード買取窓口では、持分の買取の目安を聞けます。
住んでいる兄弟が売却に反対している場合は実家に住み続ける弟が売却に反対するに、共有名義のまま置いたときに起きることは実家を兄弟で相続したらに書きました。
よくある質問
親と実家で同居していただけでも、寄与分は認められますか?
同居していただけでは、寄与分は認められにくいとされています。寄与分には「特別の寄与」が必要で、親子なら当然するくらいの手助けは含まれにくいからです。介護が必要な状態の親を、無償で長く介護していた、という事情があるかが分かれ目になります。
寄与分は、実家の売却代金だけから受け取るのですか?
いいえ。寄与分は、預金なども含めた親の財産全体から計算します。実家の売却代金と預金をどう組み合わせて渡すかは、相続人の話し合いで決められます。
実家を売却したあとでも、寄与分を主張できますか?
遺産分割が終わっておらず、相続から10年以内なら主張できます。ただ、売却代金を先に分けてしまうと、取り戻す話し合いが難しくなります。分け方は、実家を売却する前に決めて、遺産分割協議書に書いておくのが安心です。
長男の妻が介護をしていました。寄与分になりますか?
長男の妻は相続人ではないので、寄与分にはなりません。その代わり、相続人に特別寄与料を請求できます。相続人を知ってから6か月、または相続から1年を過ぎると家庭裁判所に求められなくなるので、早めに伝えてください。
寄与分に期限はありますか?
相続から10年を過ぎて遺産分割をすると、原則として寄与分を主張できなくなります。実家の売却を先送りしているうちに、期限が来てしまうことがあります。
寄与分の額は、誰が決めるのですか?
まず相続人全員の話し合いで決めます。まとまらなければ、家庭裁判所の調停や審判で決めます。審判では、介護の時期、方法、程度、親の財産の額などを考えて、裁判所が額を決めます。
まとめ:実家の売却代金の分け方を決めて、兄弟の関係を残す
寄与分があるときは、実家の売却代金を半分ずつではなく、寄与分を足した割合で分けられます。
計算は、預金も含めた親の財産全体で行います。
実家の売却代金を何%ずつ分けるかは、売却する前に決めて、遺産分割協議書に書いておきます。
話し合いの出発点は、実家がいくらで売れるかです。
実家の値段と寄与分の額が数字で並ぶと、「どちらが正しいか」の言い合いが、「どう分けるか」の相談に変わります。
親の介護のことは、兄弟それぞれに思いがあります。
分け方を数字で決めておけば、実家を売ったあとも、兄弟として親の思い出を話せる関係を残せます。
※一般的な整理です。個別の事情によって結論は変わります。寄与分や遺産分割は弁護士に、相続登記は司法書士に、税金は税理士・税務署にご確認ください。出典:民法(第904条の2「寄与分」・第904条の3「期間経過後の遺産の分割における相続分」・第1050条「特別寄与料」)、法務省「相続登記の申請義務化」、国税庁 タックスアンサー「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」。

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